「めもあある美術館」
この題名を今まで何度思いかえしてみたことだろう。いくつになっても、5年周期ぐらいで、何度も思い出していた。
小学校の時の国語の教科書に載っていた物語。
家でしかられて外へ飛び出した「ぼく」は、夕日の射し込む路地裏の古道具屋の片隅で、亡くなった祖母の描かれた油絵を見つける。
懐かしさにいっぱいになって、その絵を見ていると、のっぽの男が現れて、その絵を買って行ってしまう。
その男についていった「ぼく」は「めもあある美術館」に招待される。
「ぼく」がそこで見たものは...
--という内容。
何度も思い出すということは、小学生だった自分にとってよほど印象深い作品だったんだろう。当時の小学校の国語の教科書に掲載されていた他のものとは、少々違った雰囲気を帯びた話だったからかもしれない。
いつになっても断片的な話の内容から、夕日に伸びる影の描かれた挿し絵の雰囲気まで、薄ぼんやりと記憶の片隅に覚えていた。
小学校を卒業してから30年以上も経った先日、家族でいつものように話をしていると、なんの拍子だったか、話題が国語の教科書のことになった。
その時にまた何年振りかに思い出したのが、この「めもあある美術館」のことだった。
「そういえばさ、お父さんが小学校の時の教科書に、こんな話があったんだよ。」と、子供たちに話し始めたのだが、なにせうろ覚えのため、大まかにしか話の内容を説明できず、もどかしい思いがつのるばかりだった。
そこで「ダメ元」のつもりで、Googleで検索したところ、それは自分の記憶にあった「メモワール美術館」ではなく、「めもあある美術館」と平仮名書きする題名であることが判った。
まさかヒットするとは思っていなかったので、これだけでもびっくりした。
あらためて「めもあある美術館で検索したところ、60件ほどのサイトにヒットした。
それぞれみてみると、どうもこの中心になっているのは、ずばり「めもあある美術館」というサイトらしい。
どきどきしながら、そのサイトのリンクをクリックした。
『めもあある美術館』のことを思い出してくださってどうもありがとう。
ずばり、あなたは小学生の頃、教科書に載っていたこのお話がもう一度読みたくてこのwebサイトにいらしたのでしょう?
あなたの前にも何人かが同じ目的でここに来られました。
『めもあある美術館』をもう一度読みたいあなた、みさきあてにメールをください。
あなたの夢はかないます。
サイトの表紙に書かれたこんな文章を目にしてびっくりした。しかも同じ目的で来た人が何人もいるなんて。でも反面、心の隅では「やっぱりなぁ」という思いもあった。
この作品に対して同じような思いを抱いている人が、必ずいるはずだという予感があったように思う。
さっそく、みさきさんにメールを送った。--
そして、今、まるで小学校の時の友達と再会したような気持で「めもあある美術館」を読むことができた。
--
懐かしい小学校の校舎と6年生の教室。
国語の授業中。
そこには、先生の話は遠い彼方に置き去りにし、いつの間にか「めもあある美術館」の不思議な世界に迷い込んでしまっている自分がいる。
---
そんな様子を描いた新しい絵がまた一つ私の美術館の中に展示されたような気がする。
作者の大井三重子さん(=ミステリー作家の故仁木悦子さん)
そして、こんな素晴らしい再会をさせてくれたみさきさんに感謝!!
※絶版になっていましたが、現在は復刊されて、この新版 水曜日のクルト (偕成社文庫)
の中に「めもあある美術館」も収められています。(2016年12月現在)
新版 水曜日のクルト (偕成社文庫) 大井 三重子 ¥756
別サイトで書いていますが、加筆修正してこちらに掲載しなおしました。
私も小6の時。国語の教科書で出会いました。衝撃でした。何度も読み返した記憶があります。ちょっと現実離れしてる感じがすごく好きで、似たような錯覚を体験した夢を遠い昔にみたような思い出があります。似たようでもいいから、ドラマか映画かどなたか作って欲しいなとおもいます。