フェンスの向こうのアメリカ(vol.6)

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 ベースの入り口に着いたときはすでに夕闇が迫っていた。PXの向こうの野球場のカクテル光線が、夕焼け迫る薄暮をバックに眩しく光っていた。

ゲートでチェックを受け、生まれて初めてフェンスの中へ入った。
フェンスの中、つまりベースの中に入ることに対して、それまで特別な思いや憧れがあったわけではなかったのだが、そこは確かにアメリカの匂いがして、とてもわくわくドキドキしたような覚えがある。
 たくさんのライトに照らされて、映画館やボウリング場やショッピングセンターの建物が、昼間のように明るく浮かび上がっていた。そんな「街」の中を、ティナの後について歩いていった。
最初に連れていかれた建物は「ボウリング場」だった。 中にはちゃんとしたレーンが5レーンくらいあって、そこでビヤ樽みたいな体型のアメリカ人の夫婦や、家族連れがボウリングを楽しんでいた。
受付や物品販売も兼ねたようなカウンターの中には、派手な色のアロハシャツを着た、人の良さそうなおじさんが店番をしていた。そこではお馴染みのコーラやポップコーンに混ざって、日本の煎餅も売っていた。その煎餅の値段シールの価格が$で書いてあるの見て、あらためて「ここはアメリカ」なんだと感じた。

 ここで、やけにでっかいハンバーガーと、缶入りコーラ(コークね)をティナを通訳にして買ってもらった。もちろん支払いは、さきほどお母さんに両替してもらったドルで。
そのコーラの缶の蓋を見ると、何だかそれまで見たこともない形状のプルトップだった。
それまでは、プルタブを引っ張ってめくるように取り外すタイプの物しか知らなかった。
「ティナ、これどうやって開けるんだよ?」
「え?貸して、こうだよ。」「プシュ!」
へ~?そうやって開けるのか?プルタブは外れないんだ?いや~、コーラ缶さえ開けられないなんて、情けないったりゃありゃしない。日本でその形のプルトップにお目にかかったのは、それからしばらくしてからのことだった。

海で遊び疲れていたので、ボウリングは遠慮することにして、そこで三人でまた長い時間しゃべっていた。
「基地の輸送機に乗せてもらえば、千円くらいで世界中連れて行ってもらえるんだよ。」
「パスポートも、いらないしね。」
「へ~!」
そんな他愛もない話をしていたような記憶がある。なんだか見るもの聞くものすべてが新鮮で、「へ~!」を連発していた。

 ボウリング場の外に出ると、辺りはすっかり夜になっていた。
「これからどうしようか?」
目の前に映画「アメリカン・グラフィティ」に出てきそうな映画館があった。
「それじゃあ、映画でも観ない?」と俺の手を引いて歩きだすティナ。
「映画館まであるんだ?ところで、その映画って字幕とか出んのかな?」
「なに?ジマクって?」
英語がボロボロの俺にとって、字幕無しの洋画は致命傷だったので、映画を観ることはあきらめた。

その後、ベース内のどこで何をしていたかな?細かな記憶はもうほとんどないのだが、見るもの見るもの珍しく、当たり前だが、周りはアメリカ人ばかりなので、初めて外国に行ったおのぼりさんそのものの様子でうろうろしていたんだと思う。

一通りティナに案内してもらってベース見物も終え、「そろそろ帰ろうか」ということになった。フェンスの中から外へ、つまりアメリカから日本へ帰ることにした。

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